PROJECT STORY. 2
マイクロプリズム用途拡販
プロジェクト
NEGのマイクロプリズムは、光通信分野で高い採用実績を誇る。
その技術をより大きく活かそうと、他分野への挑戦が始まった。
PROJECT STORY. 2
NEGのマイクロプリズムは、光通信分野で高い採用実績を誇る。
その技術をより大きく活かそうと、他分野への挑戦が始まった。
Y.K.
T.N.
K.K.
STORY.1
光通信の技術は日進月歩だ。データ通信の高速化・高容量化の進展とともにデバイスの小型化、高精度化が進み、光を曲げたり、光量を複数に分岐させたり、特定の波長の光を選択的に透過・反射させたりすることができるNEGのマイクロプリズムも、より小さく、より高機能にと長足の進歩を遂げてきた。そしてついに、1辺が0.3mm という業界でも類を見ない微小なサイズに到達。この分野における微小さの追求は一段落ついた形となった。
この時、開発を担当してきたY.K.の頭にあったのは、医療機器メーカーとの取り組みの中で知った、医療分野でのマイクロプリズムの可能性だった。医療分野では、近年、体内の細い管やごく小さな孔の内部などを観察するための機器が求められている。そしてそこでは、光通信分野よりさらに微小なマイクロプリズムが求められているというのだ。「マイクロプリズムの用途拡販は今後の重要な課題だ。社会貢献度の高い医療分野となれば、やりがいも大きい。これまでの技術の蓄積を活かせば、さらなる微小化は不可能ではないはずだ」。Y.K.は決意を新たにした。
STORY.2
前向きな挑戦には常にGoサインが出るNEGの風土も手伝い、2022年4月、製造担当K.K.、営業担当T.N.との3人を実担当とするプロジェクトが発足した。顧客からの要望に従うのではないシーズ先行型の挑戦の始まりだった。
まずはY.K.とK.K.が、市場が求めるレベルの微小さを追求。一辺が0.2mm、一般的なシャープペンシルの芯の半分以下となるプリズムの試作に成功した。一方T.N.は、可能性のある客先を探し、手当たり次第にアポイントをとって、NEGのプリズムの特長を説きニーズの掘り起こしを図る。人脈に乏しく知名度も低い医療分野での営業活動は困難の連続だったが、地道な粘りが実を結び、ついに突破口が開けた。「このサイズでこんな機能を持ったプリズムはつくれますか?」。欲しかった具体的な打診が得られた瞬間だった。
たちまち開発現場は活気づく。Y.K.とK.K.は、光通信分野で培った機能を付加するための独自技術を活かし形状も工夫することで、短期間で要望に叶う試作品を実現。先方での評価も上々だった。しかし、正念場はそこからだった。1個だけの試作品は顕微鏡下で時間をかければ形にできるが、量産化はまた全く別の問題だ。微小さでは同等のマイクロボール(光学ガラスを精密加工した高精度球レンズ)の量産化経験を持つK.K.には、球体とは異なり一つひとつに決まった向きや角度を持つ多数の面をつくって光学薄膜を施すという今回の加工がどれほど難しいことか、実感を持って理解できる。「それに挑もうというのか」。その無謀さに、自分ながら呆れる思いだった。
STORY.3
予期した通りの悪戦苦闘が始まった。つくろうとするマイクロプリズムは余りに小さくて肉眼では形状を認識できず、たとえ顕微鏡下であろうとも、まともにつかむことすら難しい。このため、加工や検査の工程で製品をつかみそこね、落下させてキズつけてしまうというトラブルが続出。サイズが小さくなることで必然的に規格も厳しくなるなか、良品採取率は低迷するばかりだった。
K.K.は、現場の熟練作業者の声に耳を傾け、既成概念を全て取り払うことからスタート。これがベストとされてきた工具を新たな観点から選定し直したり、トライ&エラーを無数に重ねて加工治具を改良したりと、ひたすら小さな改善を重ねていった。良品採取率は、その都度、申し訳程度に向上する。どんなにじりじりさせられようとも一足飛びの解決策はない。作業者たちと心を一つに根気よく取り組みを続けた。
Y.K.はそうしたK.K.の動きをさまざまな面でサポートしつつ、一方で、医療分野における情報収集や人脈作りにも精力的に取り組んだ。今回の引き合いを足がかりに、今後、医療分野への参入を成功させていくためには、光通信分野で培ってきたようなその分野についての知見や人脈を欠くことはできない。どこに行けば求めている人や情報に出会えるのか。できる限り視野を広げて考え、会社の手厚いバックアップのもと、自ら選んだ学会やセミナーなどへの参加を重ねて、医療機器の今と未来を見通す目を養っていった。
STORY.4
猛暑が去り、ようやく秋の気配が漂い始めたころ、Y.K.、K.K.、T.N.の3人は、ついに小さな小さなプリズムの、一定量の出荷にこぎつけた。現場と一丸で取り組むことにより、約束通り顧客が必要とするタイミングで納品を実現することができたのだ。中でもK.K.は、半ば信じられない思いでその日を迎えた。「とても無理だと思っていた」。しかし、確かに成し遂げることができた。「何事も最初から諦めてはいけない。とにかくやってみることだ。何かアクションを起こせば、たとえ思い通りにいかなくてもヒントが得られ、進むべき道が見えてくる」。ハードな挑戦はK.K.に、不屈の精神の大切さを改めて教えてくれた。納められた製品は、「他社にはクリアできなかった課題がクリアされている」と、高い評価を受けた。
今後は、さらに本格的な量産に向け、体制を整えなければならない。K.K.とY.K.が担うミッションは、改善に改善を重ねてきた工程にさらに磨きをかけ機械化にも踏み込んで、再現性に優れ、誰でも簡単に製品づくりが行えるものにしていくことだ。さらには、営業担当のT.N.が中心となって需要を掘り起こし、機械化への投資などが可能な事業規模を確保していくことも求められる。すでにT.N.はグローバルな視野に立って戦略を練り、国内外を飛び回る毎日だ。Y.K.の医療分野における知見と人脈も、着々と厚みを増している。
こうして医療分野への扉が開かれ、世界最先端を走る医療機器メーカーとタッグを組み、まだ世の中にない医療機器の実現と進化を支えていくことも夢ではなくなった。極小サイズで高機能・高精度なNEGのマイクロプリズムは、微小な世界での光によるセンシングに大きく役立つ。たとえばそう遠くない将来、未だ誰も手を出すことができなかった体内の狭い箇所の診断や治療が、NEGのマイクロプリズムによって実現するかもしれない。
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