日本電気硝子の特殊ガラスはどのようなプロセスでつくられているのでしょうか。テレビやパソコン、スマートフォンに使われている特殊ガラス「フラットパネルディスプレイ用ガラス」を例に、各部門で活躍中の社員が各工程についてチャット形式で解説します。
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研究開発本部 研究部 第一グループ
I.T.
研究開発本部の役割を教えてください。
特殊ガラスをつくる一番初めのフェーズとして、次世代の新技術や新製品の開発、評価技術の開発を担っています。新規事業としてイチから開発に携わるケースもあれば、既存製品のバージョンアップを手がけることもありますね。
どんな流れで開発していくのですか?
営業がお客様からヒアリングしてきたニーズをもとに、まず開発コンセプトを具体化していきます。そこから実際にサンプルを試作・評価するというサイクルを経て、コンセプトに合った開発品をつくるところまでが私たちの仕事です。
最近多いお客様からのニーズってありますか?
「より薄型で高精細なディスプレイを、よりリーズナブルに」というニーズが増えています。そうしたニーズから、当社の強みである薄型パネルディスプレイ用ガラスや超薄板ガラスなども生まれました。先人たちの技術を越えていくのは難しいですが、まだまだ新しいものが生まれる可能性も十分ありますよ。
開発品をつくったら、研究開発の仕事は終わりですか?
いえいえ。開発品が量産試作・生産・販売のフェーズに移ると、今度は特性評価や不良対応といった「生産支援」、製品紹介・問い合わせ対応などの「客先対応」を行います。研究開発の仕事は広範囲にわたっているんですよ。
それは意外でした!他の部署との関わりも多いんですか?
そうですね。次のフェーズとなる「プロセス技術」には開発品を生産するにあたっての調査や設備設計などをお願いしています。「生産」部門にはより良い製品をつくるための支援を行いながら、開発品を量産してもらいます。また「営業」にはお客様のニーズを調べてもらうとともに、開発品ができた際は一緒にお客様先へ訪問・紹介しています。
ちなみに開発業務もチームで行うんですか?
開発業務の大部分は、一人ひとり違うテーマを持って個人の裁量に任されています。比較的自由に動けて、やりがいも大きいですね。もちろん悩んだ時は上司や先輩に相談したり、アドバイスをもらったりすることもあります。
仕事のなかで心がけていることはありますか?
できるだけインプットの量を増やすようにしています。例えばガラスに関する国内外の論文を読んだり、ニュースへのアンテナを張っておいたり。それらが間接的に開発コンセプトのヒントにつながることもありますからね。
なるほど!では研究開発の仕事の魅力はどういうところですか?
インプットをもとに自分の知見を広げ、アイデアを提案するというアウトプットができるところです。また研究開発から、生産支援、客先対応まで、特殊ガラスができる工程のすべてに関わることができるのも面白いですね。製品が市場に出回った際の達成感は大きな魅力のひとつです。
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プロセス技術本部 製造技術部 第二グループ
Y.K.
プロセス技術本部ではどんな仕事を行っていますか?
研究開発部門がつくった開発品を量産するためには、特殊な製造設備が必要になります。そこでプロセス技術本部では、設備の設計・施工・開発を担っています。実はガラスメーカーのなかでも設備設計・施工を自社で行っている会社は珍しいんですよ。
へえ!それだけ技術力が高いということですか?
そうなんです。一貫した社内生産体制があるからこそスピーディな製品化も可能ですし、ユニークな技術や製品が生まれる土台になっています。特に私がいる部署で手がけているガラス溶融炉(ガラスを溶かすための窯)は、会社の心臓ともいえる重要な製造設備です。
プレッシャーも大きそうですね…
設備の性能が会社の業績に直結するため、責任は大きいです。でも溶融炉の設計・施工はいくつかのチームに分かれて担当しているので、自分一人で抱え込むことはないですよ。
設備を設計する上でのテーマは何ですか?
私が入社する前から「長寿命化」が一つのテーマでした。設備の年数が経つと耐久性が落ち、ガラスに泡や微少な個体が入るという不良が発生しやすくなります。そのため設備の改善を繰り返して長寿命化させ、できるだけ効率的に生産できるシステムを考えています。
なるほど。研究開発部門とも連携しているんですか?
研究開発部門の試験炉で高品質なガラスができたとしても、量産できるかどうかは別。多くの場合、高品質なガラスほど溶融・成形が難しいんです。そのため、研究開発部門とはガラスの品質と設備の性能のバランスについてよく相談していますね。
他の部署との関わりはどうですか?
「生産部門はお客様」という意識で、私たちがつくった溶融炉の使い勝手や生産状況などをヒアリングして、次の改善に活かしています。
えっ!社内なのにお客様なんですか?
同じ社内ですが、私たちの設備を使ってもらうお客様という立場で、生産部門が使いやすいよう心がけているんですよ。また営業とは直接やりとりすることはありませんが、世の中のトレンドを把握する大事なポジションだと思っています。例えば当社が過去に主力製品だったCRT用ガラスを液晶用ガラスに切り替えることに成功できたのも、営業がいち早くニーズを掴んできたからです。
これから目指していく設備はどんなものですか?
ガラスを溶かすのは大量のエネルギーを消費するため、地球環境に与える影響も大きくなります。そこで近年はカーボンニュートラルをテーマに、最先端の電気炉を設計しています。NEGは環境負荷の低い技術について、国内ではかなり先進的な取り組みを行っている会社なんですよ。
設備設計の仕事が、環境を守るという社会貢献にもつながるんですね。
はい、自分の仕事が少なからず社会に影響を与えていると思うと、やりがいがあります。当社は溶融炉の設計から施工、製造、販売まで一貫体制を築いているので、すべての工程を理解しながら仕事できるのも楽しいところです。
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ディスプレイ事業部 TFT成形部 第二成形グループ
T.S.
生産部門はまさに特殊ガラスを製造しているところですね。
そうです。私のいる成形グループではガラスの原材料を溶かし、ドロドロに溶解されたガラスを板状にしています。溶解工程ではガラスの中に入ってしまう泡や異物を少なくすること、成形工程では表面を研磨する必要がないフラットな板をつくることが大切です。
泡や異物が入ったガラスは不良品ってことですか?
はい。皆さんも毎日見ているテレビやスマホの画面に泡が入っていたり、デコボコしていたらイヤじゃないですか? 生産部門ではそうした不良品をなくし、生産効率アップを目指しています。
生産現場でのトラブルってけっこうあるものですか?
毎日のように何かしらありますよ。溶融ガラスの温度は1600度以上にもなるのでカメラを入れられず、中の様子が全くわかりません。そこがガラス製造の難しいところ。泡や異物がいつもより多いときは炉内のトラブル事象について仮説を立て、設備の設定を変えています。
具体的な仕事内容としては設備のオペレーションですか?
生産部門では特殊ガラスの製造に加えて、窯、フィーダー、成形炉、アニーラーといった設備の開発・設置・保全も行っています。
想像以上に仕事の幅が広いですね…!
私も入社前は、工場での仕事はレシピ通りにボタンを押すだけというイメージでした(笑)。実際はそんなに簡単ではなく、設備から得られる多くの情報をもとに人間が判断をし、その都度レシピを変更しています。
プロセス技術でも設備設計をされていますが、役割分担はありますか?
定期的に入れ替えるときに合わせて設備を改善するため、プロセス技術とは毎月打ち合わせを行っています。問題提起と改善点のイメージを生産部門からプロセス技術に共有し、設備の詳細設計と溶融炉の建設・整備はプロセス技術に担当してもらいます。
仕事の進め方についても教えてください。
生産設備は24時間止まることなく運転しているため、4班3交替で操業しています。だから4つのフェーズのなかでも生産部門の人数が多く、団体戦で臨んでいます。毎日変わるレシピを全員で共有して操業しています。
そんな生産部門のやりがいって何ですか?
お客様との間で決められた生産量を達成できたときは嬉しいですね。1日の生産量の記録を更新できるとチーム内から拍手が起こります。1ヶ月の生産量を記録更新できたときはみんなで打ち上げに行くこともあるくらいです。
それだけ生産量を達成するのは難しいってことですね。
3m×3mのガラス板に泡一つ入っていても不良品になります。必要な品質を維持するためには、それだけ細かい操業をしていかなければなりません。
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ディスプレイ事業本部 ディスプレイ営業統轄部
営業部 第二グループ
K.H.
学生目線でみると、営業の仕事が一番わかりやすそうです。
そうですよね。営業の目的はシンプルにいうと、特殊ガラスを販売することです。ただ販売するために担う役割は多岐にわたります。お客様への製品説明、ご要望のヒアリング、価格交渉、売買契約、注文の受注、輸送手段の選定や出荷手配、販売後のアフターフォロー、代金の回収など、売る前から売った後まで販売活動のすべてに関わるんですよ。
販売する製品は決まっているんですか?
すでにある製品の中からお客様に適した特殊ガラスを提案することもあれば、お客様のニーズに合わせて新たな製品を一緒に開発することもあります。
へぇ!営業さんが開発にも携わるんですか?
その場合は研究開発部門と連携し、サンプルワークから量産まで数年かけて行うことが多いですね。また、すでにある製品の場合は販売計画を立て、どんな種類のガラスをどれだけ、いつまでに必要かを生産部門へ共有します。
お客様先はどういうところですか?
ディスプレイ事業本部の主要なお客様は、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイ用パネルを製造しているメーカーさんです。そのほとんどが中国、韓国、台湾の会社で、なかでも中国は一番大きな市場になっています。現在、当社の売上の約8割は海外なんですよ。
じゃあ営業活動も海外でされるのですか?
いずれの国にも現地法人があり、私たちは彼らが円滑に営業活動できるようサポートするのが役目です。また私自身はヨーロッパやアメリカのお客様も担当しているので、日々海外のお客様とWEBミーティングをしたり、メールでやりとりしたりすることが多いですね。時には海外出張に出かけることもありますよ。
すごい!英語はどうやって覚えられたんですか?
私は帰国子女でも、留学していたわけでもありません。必要に迫られてやっていくうちに学んできたという感じですね。また社内語学スクール(英語・中国語)や海外研修に参加するなど、勉強できる機会もあります。
営業のフェーズにおける魅力はどんなところですか?
ディスプレイ事業本部ではテレビやスマホ、パソコンなど現代の生活に必要不可欠なものを支えているというやりがいを実感できます。ガラスの生産量は平米で換算するのですが、月に何十万~何百万平米もの大きさのガラスの販売に携わっているってスゴイことだなと。
扱う金額も大きそうですね!
そうですね。。大きなプロジェクトに関われるのはモチベーションにもつながります。時代の最先端をいくグローバル企業と仕事が出来るのも刺激的です。
聞いているだけでワクワクします。
実は液晶ディスプレイ用ガラスは、当社を含めた3社で全世界の9割のシェアを占めています。世界トップクラスの特殊ガラスメーカーだからこそ、世界を豊かにするという大きな仕事に関われるんですよ。
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