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創造性を知る

製品開発ストーリー

Project Story 1現象の解明に一途

高名な海外の研究者も惹きつけた
かつてない強いガラス実現に向けての
4年間に及ぶ基礎研究の成果。

村田 哲哉Murata Tetsuya

基盤技術部
理学研究科物理学専攻修了
2008年入社

脆く割れやすい。それは、ガラスが持つ宿命的な弱点だ。ガラスの脆性は、割断や研磨といった加工を可能にする。しかしその割れやすさゆえ、高強度が要求される場合においては、脆性の克服が常に重要な課題となっている。村田は、かつてガラスの組成設計を担当し、ある成分を加えると、硬度を高めたり、たわみや割れを起こりにくくしたりすることを経験的に把握していた。それはなぜなのか? 解明できれば世界が求めるより破損し難いガラスの実現へとつながる快挙となるだろう。研究者としての現象解明への一途な想いを、世界初の研究成果に結びつけることができたら---。いつしか村田の胸に芽生えていたそんな夢が、叶う時がやってきた。まさにそのテーマでドイツの大学との共同研究が企画され、メンバーとしてアサインされたのだ。当面の目標は、期待通りの成果を上げ、国際学会で発表すること。こうして、世界初を目指す村田の挑戦が幕を開けた。

学会発表まで残り4

幸運にも構造研究の第一人者と組んで、
やりたかった研究に挑めることに。

村田はある日、社内で先輩に呼び止められた。村田にとって良き相談相手で、ある成分がガラスを強化するメカニズムを研究してみたいという夢も、機会あるごとに聞いてもらっていた先輩だ。「喜べ。やりたがっていた研究が始まるぞ。ドイツの大学の先生が構造のデータをとってくださることになった」。その先生は、世界が誇るガラスの構造研究の草分け的存在だ。先生が所属されている大学と日本電気硝子との共同研究で、大学側が構造を、日本電気硝子側が機械的特性を調べ、特定の成分を加えることでどう構造が変わって強度が高まるのかを解明することが決まったのだという。余りにも期待通りの展開に村田はただただ驚いた。
こうして2014年某月某日、プロジェクトがスタート。実験に次ぐ実験の日々が始まった。先輩は、得意の英語を活かして共同研究の窓口となり村田をフォローしてくれる。もう一人、ガラスの強度に関して社内一の知識と経験を持つ先輩もアドバイザーについてくれた。目指すメカニズムの解明に向け、最適なガラス組成と実験系を考案し、ひたすらデータを積み重ねていく。機械的特性には多様な指標があるが、そのうち、まずは割れやすさの指標の一つに着目。割れやすさなどガラスの機械的特性を評価する実験は、ばらつきが大きい。議論に耐えうる信頼性のあるデータを得るためにどの実験も全て100回以上繰り返した。

学会発表まで残り2

壁に阻まれても諦めず、
粘り強く別方向から攻めて目標を達成。

実験の醍醐味は、無心に繰り返した実験結果によって現象が解き明かされる瞬間にあるが、この研究ではその瞬間が遠かった。確かに割れにくくなるのだが、どうしても割れやすさと構造の変化の関係など、メカニズムを明確にすることができない。極めて密度の濃い2年が過ぎ、それでも成果は現れず、村田の苦悩は深まった。
このとき村田を支えたのは、全ての実験データの信頼性に対する、揺るぎのない自信だった。「確かなデータである限り、さらに何か別の事実がプラスされた時に、必ず雄弁に何かを語り出すはずだ。別の機械的特性にもアプローチすべき時だ」。先輩二人の意見も参考に、最終的にこう決断した村田は、割れやすさに関する追究に共に、硬度や弾性率が向上するメカニズムの追究も進める方向へと舵を切った。
狙いは違わず、硬度においても弾性率においても、共にほぼ1年で結果を出すことができた。信頼性のあるデータを得るべく100回以上の実験を重ねて仮説を一つひとつ立証し、それをひたすら積み重ねていく。すると、割れやすさにおいては明確にならなかった構造の変化との関係がはっきりと浮かび上がり、最終的に、ある特定の成分を加えることによる構造の変化と、その構造の変化がどういうメカニズムで硬度や弾性率の向上となって現れるのかについての仮説をしっかり立証することができたのだった。

学会発表まで残り3か月

国際学会で高い関心を集めた成果発表。
製品に結実させるための挑戦は続く。

努力は予定通り国際学会での発表という形で報われることになった。画期的な成果を、横浜で開催される国際ガラス会議の年会(ICG2018)で披露する。会議開催まで3か月に迫った2018年6月、村田は実験結果のまとめに着手した。
最も苦心したのが、割れやすさ改善のメカニズムの解明に向けた最初の2年間の実験結果を踏まえて、今後どんな仮説を立てどう立証していくかを明確にすることだった。そもそもガラスは最も近接する原子の数や原子間の結合距離、原子間の結合角などには秩序があるものの、金属やセラミックなどとは違って、より長距離的な秩序、すなわち結晶構造に不可欠な繰り返しのパターンは存在していない。また、理論的な強度は極めて高いのに、キズが入ることで簡単に割れてしまう。こうした特殊性が割れのメカニズムを複雑で解明しにくいものにしている。でも、だからこそガラスは研究対象としておもしろく、村田は考察にぐんぐん引き込まれていった。共同研究先とのディスカッションにも多大な刺激を受け、発表直前まで考え抜いて、ついに自分なりの仮説に行き着くことができた。
こうして迎えた発表の時。立ち見も出る100名近い聴衆の前で、4年間の成果を語り尽くすことができた。海外から参加されていた強度の世界的権威の先生から「ガラスの割れやすさの評価方法は多様だから、異なる評価方法も導入した方がより本質に迫れるのではないか」という価値あるコメントをいただけたことは何よりもうれしかった。
発表の余韻は今なお村田の中に鮮明だ。しかし、発表は単なる通過点でもある。より自在に割れにくいガラスを実現するために。その挑戦は、今後いよいよ真の正念場を迎えようとしている。